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驪珀と関わりがあるのは、神々や妖と言われる類の者が多い。彼等は当然人間離れした怪力の持ち主だし、赤子ですらも人の何倍もの力を持っていた。
赤子以下の抵抗等蚊に刺されたくらいの感覚で、全くもって驪珀には意味が無い。
彼が思わず哀れみを向けてしまうのも、無理は無いだろう。本当に弱々しくて情け無いと、溜息が零れてしまう程だ。
「人は脆弱だからこそ知識を求め、強くなろうとするのだろうな。……忌々しい」
少し……ほんの少し力を入れるだけで小枝を折るように骨を砕く事は容易で、驪珀は玩具を壊しまいと細心の注意を払いながら漓朱の事を引き寄せた。
「あの……」
「何故我はそなたを連れ帰って来たのだろうか。人等ろくな者はいないし、欲深く計算高いというのに」
そう言いながら漓朱を包み込む腕は震えていて、何処か苦しんでいるように見え彼女はそっと驪珀の背中に手を伸ばした。
細く、男性の中では華奢な方に見えるのに、驪珀の背中はがっちりとしていてその見た目とは相反するものだった。
筋肉質な触り心地。着流し越しにも良く鍛えられているという事が解る男性的な躯。
ーー過去に人と、何かあったのだろうか……?
驪珀は常に人が嫌いだと言う。人を語る時の口調は厳しいものだし、自分に向ける眼差しも冷たい。
漓朱が驪珀と関わったのは今日と、連れて来られた日の二日間だけ。しかし、彼が深く人を憎んでいるという事は彼女にひしひしと伝わっていた。
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