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「確かに人は弱いからこそ、身を守る為の知識を得ようと卑しいのかも知れません」
獣に襲われないようにする為にどうしたら良いのか。体力がないから、楽がしたい。楽する為にはどうしたら良いのか。
そうやって生きていたからこそ科学が発展し、最終的には環境を汚して粛清されたのだろう。
驪珀が驚いて目を瞠った事に漓朱は気が付き、そっと彼の顔を覗き込んだ。
「私も私の身を守る為にこの世界の知識を得たい。……それに、私は貴方の物なのでしょう?」
彼の目を引く高貴な雰囲気と豪華な服装からして、かなり高い地位にある神様な筈。
ならば、知らぬ存ぜぬで全く知識のない自分はきっと、彼の評価を酷く下げる事になるだろう。
正直言って驪珀の事は好きではないし、プライドが高く傲慢な態度には心底腹が立つ。しかし仮にも、己の命を助けてくれた張本人なのだ。
だったら人として恩返しまでは行かなくとも、せめて彼の足を引っ張るような真似はしたくない。負い目を感じたくないという自分勝手な考えだが、漓朱はそう強く思っている。
「貴方の所有物である私が莫迦で世間知らずだと周りに知れれば、恥になるのでは?」
大きな紅色の勝気な眸に、驪珀は下唇を強く噛み締めた。彼女の深意が解らなかったのだ。何か企んでいるのではないかと、目を眇(すが)めてしまう程に。
「教えて下さい。……知りたいのです」
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