四つの国

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裏表のない純粋な思いだからか漓朱の眸は澄んでいて、真剣そのものの表情を見せられる居心地の悪さに驪珀はたじろぐ。 陽が段々と強くなって来た。小鳥の囀りが二人の鼓膜を震わせ、朝の色が濃くなって来た事を知らせる。 「解せぬ……。しかし、良かろう。そなたに教えてはやるが、少しでも妙な態度を取れば殺す」 驪珀は漓朱のせいで恥をかこうが、周りの者達に貶されようが、そんな事はどうでも良かった。 他者に余り興味が無いのだ。何を言われても、何を思われても気にはしない。 背に回されている腕に驪珀は今更ながら眉根を寄せ、振り払う様に立ち上がった。 少し乱れてしまった着流しを自然な流れで正し、床に座り込んでいる漓朱に目を向ける。 「空が四色に分かれている事は知っているな……?」 初めて神の国に連れて来た時、漓朱は空を見上げ感嘆の声を漏らしていた。着飾られている着物の裾を興奮気味に揺らし、目を輝かせてた彼女の姿を思い出す驪珀。 そんな姿が只々美しいと、そう思ってしまった事も共に思い出し、忌々しそうに奥歯をぎりりと噛み締める。 「あれはこの神の国が四つに分かれている事を表しているのだ。……そなたが今いる国は、蒼空の下の国」 国の範囲は全て空の色で決まっている。しかし日が暮れ始めると同じ色になってしまう為、きちんと区切る為に境界線が引かれていた。
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