四つの国

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「そしてそなたが初めて足を踏み入れた場所がこの神の国の丁度真ん中にあたる。故にそなたは四色の空を見れたのだ」 漓朱はその言葉に驚き、窓の外を慌てて見遣った。この一カ月鎖に繋がれた生活に緊張していて、まともに空を見た事がなかったのだ。 驪珀の言う通り、空は真っ青であの時見た残り三色の色は何処にも見当たらない。周りの情景に全く気を向けていなかった己の余裕の無さに、漓朱は内心苦々しい思いで一杯になった。 「青は碧禮国(へきれいこく)、黄は黄呀国(こうがこく)、緑は玉翠国(ぎょくすいこく)、白は白亜国という」 神々の国を大きく分ければ驪珀が述べたこの四つの国となるのだが、細かく分ければ更に何十、何百もの国があり、そこまで説明する必要は無いだろうと彼は息を吐く。 「我は碧禮国の王でありーー、漓朱よ、何をそんなに驚いているのだ?」 「いえ、その……何でもありません」 高貴な身分の者であるという事に当然気付いてはいたのだが、まさか王様までとは思っておらず、今まで驪珀に取っていた数々の酷い態度に漓朱は青褪めた。 ーー王様だなんて、そんな……。 良く殺されずに済んでいたものだと、漓朱は小さな顎に冷や汗を流す。 居心地の悪さに居住まいを正した彼女は、自分をじっと見ている驪珀から目を逸らして拳をぎゅっと握る。 「……我が王と解った瞬間にそれか」
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