四つの国

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態度を変えたかの様に見える漓朱が許せなく、驪珀は不機嫌に視線を細めた。 神である己に人であるにも拘らずハッキリと物を言う姿に、内心感心していたと言うのに……気に喰わない。 人等所詮この程度かと、漓朱に気付かれない様指先が痺れるくらいに強く拳を握る驪珀。 彼女に対し興味が失せ、興味が失せた途端に人と同じ空間に居るという事実に驪珀は吐き気を催した。 しかし、漓朱は別に今まで通りの態度を取る事を止めた訳ではなかったのだ。只驚き、衝撃過ぎて背筋を正しただけ。 だから感情という感情が読み取り辛くなった驪珀に息を飲み、何故そうなったのか解りかねて思わず小首を傾げてしまう。 「驚いて姿勢を変えただけなのにそんな目で見られるなんて、不愉快です」 「そなたは我が王だと解ったから、態度を改めたのではないのか……?」 「貴方が王であろうかなかろうが、連れて来られた私には関係ありません。ですが、今までこの態度で良く殺されずに済んでいたなと驚いただけです」 深紅の眸が、真っ直ぐと驪珀を捉えている。偽りのない言葉なのだろう。揺るぎない強い眼光に、驪珀は瞬きを繰り返してしまった。 「……そなたは面白い。生かした甲斐があるというものだ」 消えていた興味が瞬く間に復活し、失望したからこそその前よりも強烈に、漓朱に対して関心がわく。 くるりと彼女に背を向けた驪珀は戸に手を掛け、形の良い唇を開けた。
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