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「……軽いな。そなた、きちんと食事は取っているのか?」
「此処に来てからは頂いてます」
「此処に来てからは……? では、人の国にいた時はろくに食べていなかったのか?」
声が籠っている事を不思議に思い漓朱を一瞥した驪珀は、耳が真っ赤になっているさまに首を傾げた。
己がこの様にして女を抱くと、抱かれた女は皆媚びた目でじっと見て来て目が合うと必ず微笑むというのに、漓朱はこちらを見もしていない。
寧ろ見たくないといった様子で顔を押し当てている姿は、彼には怪訝でしかなかった。
しかしこちらを見ろとは言えず、驪珀はもやもやとする気持ちを押し殺そうと歩調を早めた。
「幼い頃に両親を亡くし、一人でしたので。……お金が無かったんです」
それでも助けてくれた人は居るし、全くご飯が食べれないということは無かったので平気だったと話す漓朱に、驪珀はそうかとだけ一言呟く。
今驪珀と漓朱が居る場所は、彼が最初に述べた通り城ではなく屋敷だ。驪珀は王であるが城に住む事を好かず、基本的に此処で過ごしていた。
城は落ち着かない。常に監視されている気分になり、安らげなかったのだ。とはいえ現在住んでいる屋敷と城はとある部屋から一瞬で行き来が出来てしまうのだが。
後数分で食堂に着く。驪珀はそっと漓朱を下ろし、手を引いて進んで行く。
「漓朱よ、食事が終わったらそなたに伝えなければならない事がある」
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