四つの国

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「……漓朱よ、そんなにお腹が空いたのか?」 「い、いえ違います……! 私は只、このお屋敷の方々がとても少ないと思っただけで……」 不意に振り返られ話し掛けられたものだから焦ってしまい、漓朱は飲み込んで諦めた疑問をついつい口にしてしまう。 言っている途中ではっとして、だが途中で止める訳にも行かず気不味さから次第に声が小さくなってしまった漓朱の言葉はとても聞き取り辛く、驪珀は呆れてしまった。 「良いたい事があるのならば、はっきり言えば良い。……我は気が長くない」 食堂の戸を開け中に入る驪珀。手を繋がれている漓朱もそれに続いて入れば、外装と同じく目に突き刺さる程白い食卓テーブルに息を飲んだ。 美しい彫刻が施されたテーブルの装飾には、様々な宝石が散りばめられている。 大きく長い其処には少なくとも十人以上は座れる程で、天井から吊り下げられているパールのような電球代わりの眩しい発光体に彼女は言葉を失った。 やはり此処は、自分が住んでいた世界とは違い過ぎる。一生見る事も叶わなかったであろう豪華な空間には、心踊らずには居られない。 しかしはしゃぐ事は自尊心が許さず、漓朱は口内を軽く噛んで己の気持ちを落ち着かせた。 テーブルに飾られている金の蝋燭立ても、オーロラに輝く薔薇の花も、全てが幻想的であるが彼女は我慢して平静を装い驪珀に話し掛ける。 「……此処にも誰も居ないのですね」
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