四つの国

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驪珀は誰よりも自尊心が高い。幼い頃から神や妖を統べる為の教育を受け、彼等の頂点に立つ王とはどの様にあるべきか等徹底的に叩き込まれたからだ。 王たる者に相応しくなるようにと育てられて来たのだ。膨大な知識も、従える者より強くなるべく鍛えた躯、力も、全て全て血の滲むような努力をしたからこそ手に入れた。 それだけして来たのだ、自負するなと言う方が無理である。だからこれだけ傲慢で、しかし威厳、畏怖される様な王になったのだ。自尊心が高くなければ逆に不自然で気持ちが悪い。 そんな彼を無視したのだから、驪珀が腹を立てない訳が無い。しかし漓朱にとって今この瞬間に揉められるのは至極迷惑な事である為、彼女はどうすれば驪珀の機嫌が直るのか思考を巡らせた。 だが数時間しか関わりの無い相手のご機嫌取り等当然出来る筈が無く、彼女は遂に諦め取り敢えず琉貴に返事をした。 「ありがとうございます。……その、驪珀は理由も無く突然殺して来たりはしないと思います。彼は多分良い人ですし、殺されたら殺されたらで、私にーー」 「もう良い漓朱」 漓朱が一生懸命言葉を選び話しているから興が冷めたのか、はたまたこれ以上続けられたら琉貴の手前気恥ずかしく居た堪れないからか……。 ぴしゃりと冷たく言葉を遮った驪珀を見ながら、琉貴は内心微笑んだ。彼が鋭い口調で言っているのは、存外動揺を悟られない為だろう。 「ふふっ。あっ、主様朝餉の良い香りがして来ましたね」 「ああ。漓朱よ、早く座るのだ。それと琉貴、そなたは我の隣では無く漓朱の隣に着け」 「こんなに可愛い子の隣に座れるのは願っても無いですよありがとうございます! ですが主様、何故彼女の隣をお許しに……?」
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