四つの国

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何も無く所有物に他人を近付ける人物では無いと重々承知の為、琉貴が大きく首を傾げるのは無理もない。 「漓朱に食事作法を教えてやってくれ」 「成る程……ですが主様、人に知識を与えるのは好かないと前に言ってませんでしたっけ?」 笑ってはいけない、堪えなければ。驪珀の目紛しい感情の変化に嬉しさ半分、おかしさ半分で口元が弛んでしまいそうで、必死に唇を引き結ぶ。 兎にも角にも今は座るべきだ。突っ立っているままの漓朱にひらひらと手を振り、琉貴は座ろうよと視線で伝える。 「好かん。が、今回は別に良い」 もう駄目だ。琉貴の性格上、これ以上笑を堪えるのは不可能。折角我慢していたのに……もうこれは不可効力というものだ。 「主様、面白いっ。今回はって、一度良しとしたら絶対今後も良しになると思うんですがっ」 豪快にげらげらと腹を抱えて涙を流す琉貴は、驪珀の性格を良く解っている。 遠慮がちに席に着いた漓朱の困った横顔に目を這わせ、驪珀に視線を戻しまたぷぷっと空気を吐き出す琉貴。 何とめでたい事か。主人が神や妖でも心動かされた事がないというのに、人嫌いなのに人によって変わって行くなど……。 やはり腐っても神は神。人を本気で嫌う事は本能上出来ないのだろう。人の願いから生まれる神もいるくらいなのだから、例えどんな事をされようとも……。
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