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「ではでは俺はこれで失礼しますね主様。……歩き方や仕草については後日指導しますので、今日はお二人でごゆっくりー!」
飄々としている琉貴に漓朱は呆気に取られ、固まってしまう。それに仮にも王である者を前にこの態度、普通は考えられない。
何れだけお互いにお互い、信頼し合っているかが解る。彼等の強い絆を感じ、漓朱は長い睫毛で影を作った。
……私には、こんな相手は居なかった。皆近寄って来てくれては居たが、全員が信じられなかった。
暗い表情を浮かべるも、そういう顔は可哀相でしょうアピールをしている様な気がしてならず直ぐに元の表情に戻す漓朱。
立ち去ろうとしていた琉貴ははっきりと、その顔を視界に捉えていた。やはり彼女には何かあるのだろうと、早足に部屋を後にする。
琉貴が向かっているのは、もう一人の側近の元だ。冷静沈着人嫌い。全くもって漓朱に会わせるべき人物でないが、驪珀は彼に何も言っていない。
だから琉貴は慌てて彼に城の仕事を押し付け、暫く屋敷に帰って来ないよう配慮していた。そう、無理矢理押し付けていたのだ。
主人の為に相談したい事があるのに、会えば確実に説教を受ける事は解り切っているから気持ち的には物凄くゆっくり歩いて行きたい。
そんな琉貴の居ない所で、驪珀は漓朱の手を引いていた。
「食事の前に琉貴が言い掛けた事を覚えているか……?」
驪珀が向かっているのは、自分の寝室だ。別に他の部屋でも良いのだが今は疲れており、話が終わったら直ぐに眠りに就きたかったのである。
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