四つの国

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「覚えています。貴方の国と黄呀国、玉翠国、白亜国の王が人を連れ帰ったら」 「ああ、その話だ。……この四つの国の王が全ての土地を加護している訳ではない。様々な神が加護しており、それを我等が把握、管理しているのだ」 部屋に着き、戸を開ける。中は広々と開放的だった。金銀豪華な装飾はなく、生活感が見れないくらいに整理整頓されている其処は少々薄気味悪い。 本当に此処で生活しているのだろうかと、漓朱は眉根を寄せる。塵一つも残されていないような部屋には戸が三つあり、驪珀は迷いもなく進み寝室の戸を開けた。 寝室も無駄に広い。中心に置かれた王様らしいサイズのベッドには当然、天蓋が付いており美しいドレープが吊り下げられてある。 「あの……何故寝室なのですか?」 漓朱が疑問に思うのも無理はない。別に寝室まで行かなくとも、この一つ前の部屋で良かったのではないだろうか。 驪珀は質問に明らかに気分を害し、掴んでいる手に力を入れる。思わず痛みに下唇を噛み締める漓朱。 「何故そなたにその理由を伝えねばならぬ?」 道具は道具らしく疑問も持たずに主人の意向に従えとでも言いたげな口調に、漓朱は強く拳を握り締める事しか出来ない。 そんな様子にふと一つの結論に辿り着いた驪珀は、意地悪に口角を上げ漓朱の華奢な顎を掴んだ。 「別に今はそなたを抱こうとしている訳ではない。……それとも、我に抱いて欲しいのか?」 予想外の発言にカッと頬を真っ赤に染め上げた漓朱は、自分の言葉で変な誤解を生んでしまった事に気が付き慌てて彼の腕から逃れた。
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