四つの国

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恥ずかしくて堪らない。余計な事を訊かなければ良かったと深く後悔するし、明らかに楽しんでいる様子に悔しくもある。 「そんな事思っていません。……話を続けて下さい」 漓朱のつれない態度にまた表情が険しくなるも、これ以上本題を進めないのは睡眠を取るのが遅くなってしまうと、驪珀はベッドに腰を下ろした。 じっと見詰めて来るのは、隣に座れとの合図だ。これを無視したら驪珀の性格上、只じゃあ済まされない。 仕方がなくおずおずと隣に腰を下ろした漓朱は、近過ぎる距離に心臓の動きが速くなるのを感じながら、緊張で渇いた咽に唾を送る。 「……我等は自分の国の神々の供物も把握している。そして、他国の王の供物もだ」 生贄が子を作ったら、親よりも強い子が生まれる。王が自分の国の供物を把握するのは、謀反を企てる奴が現れないか監視する為なのだ。 他国の王の供物を把握するのは、争い事を起こされないかどうか王三人の目で監視する為。とはいえ何方の事例も一度も起こった事はないし、今では王同士生贄を紹介するのは只のお遊び行事となっていた。 「そなたを会わせるのは二週間後だ。……そなたに作法を教えるつもりはなかったが、興が乗った。教えてやるからには当日の失敗は許さぬ」 もし完璧に出来なければ、驪珀は漓朱を躊躇いもなく殺すだろう。彼女はそれが解っているから、躯を固くした。 「それと、他の国の王達だが……玉翠国の王はそなたら人を好いており、黄呀国の王はどちらでも無く、白亜国の王は大の人嫌い故、そなたは白亜国の王には近付かない方が良い」 折角楽しくなって来たのだ。自分の玩具を壊されたくは無いし、手も出されたく無い。
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