四つの国

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有無を言わさぬ声音に漓朱は頷き、これから会う事になる白亜国の王に強い不安と恐怖を抱いた。 実際に見た事のない人物だからこそ、あれやこれやとある事ない事を考えてしまう。人という生き物は弱いからこそ頭の中で想像を膨らまし、実際に会った時パニックを起こさないようにしているのかも知れない。 「あの……其々の国の特色等あるのでしょうか?」 この国の特色すら知らないが、何れ住んでいれば解って来る。それに他国の王と会うのは二週間後。ならば先にその三国の知識を身に付けるべきだ。 見上げられ、熱心な態度に驪珀はどう反応したら良いか解らず視線を逸らす。自分にこうも臆さず訊いて来る者は、中々居ない。 畏怖されるべき立場なのだから、漓朱の様な者には普通に過ごしていたら出会わないのだ。 彼女が人で、この時代の者であるにも拘らず信仰を持たずに育ち、驪珀を神と解りつつも実際の所本当の意味でまだ理解出来ていないからこそ出来る芸当だ。 「……貪欲だな。玉翠国は王が平和主義でのんびりとしているせいか、国民も基本的に平和呆けの血を好まない、比較的穏和で温厚な性格の者が多い。しかし……」 争うと即刻国外追放される程、争い事を極端に嫌う国である。だから勿論連れられて来た生贄の扱いも丁寧で、人の国に居た時よりも幸せな生活を送る者が多い。 「醜い見た目の者にはどの国よりも容赦がない」 驪珀の言葉に漓朱は目を丸くした。平和主義の国なのに、見た目で差別するなど穏やかさとはかけ離れている気がしたからだ。 「何故、なのでしょうか……?」
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