四つの国

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身の危険に対して怖いと思うのは理解出来るが、それ以外の事に恐れをなすのは驪珀にはない感情だから意味不明で、奇妙な物を見る様に漓朱を見下ろす。 「驪珀は病とか幽霊とかは怖くないのですか?」 「怖く等ない。神々は病には滅多に罹らぬし、幽霊など何処にでも居る故怖がる必要が無い」 何処にでも居る。その言葉に小さく悲鳴を上げ、出会いたく無いと切に願う漓朱。 幽霊に何をされた訳でもないが、そう言う得体の知れないものはより恐ろしい者に頭の中で作り変えてしまうから、莫迦みたいに恐怖する。 「……話を戻すぞ、漓朱よ」 まだ怖がっている姿に溜息を吐き、目障り故どうにかして落ち着かせようと子供をあやす様に優しく頭を撫でながら、驪珀は白亜国について再度語り出す。 「白亜国に連れられた生贄は、病、呪詛、拷問、どの方法で死ぬのが一番苦しむのか日々試され、死んだ後は亡霊として白亜国に一生飼い慣らされる」 人が憎い、憎くて堪らない。国全体がそういう者達の集まりだから、酷い扱いをしようが咎めやしないのだ。 人を加護しているのはこの娯楽が消えぬ様にしたいが為だし、国に居る生贄が足りなくなれば態と疫病を起こし新たなる供物を捧げさせる。 「あの、驪珀……。何故白亜国の方々はそんなにも人に苦しみを与えるのですか……?」 「さあな。我は碧禮国の者だ。他国の者達が捧げ物に何をしようが我には関係無い」 赤々として炎の様な……この世界の不条理に対し、知識を求め燃ゆる眸。先程までは怯えていたというに変な奴だと、驪珀は目を眇めた。
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