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暖かい風が吹いている。色取り取りの花の香りを運び、漓朱と驪珀、琉貴の間をすり抜けて行った。
豪華絢爛。贅を尽くした佇まいに、漓朱は居心地悪そうに縮こまる。朱金の門をくぐった時からずっとだ。
此処は四国の王が集まる時利用される屋敷。朱の柱に板張りの広間。この建物は和が色濃く、平安時代の貴族が住んでいたそれととても良く似ている。
広々とした廊下を歩き幾つもの広間を抜ける途中で、漓朱は太鼓橋の下の大きな池に泳ぐ、背鰭(せびれ)が異様に長い見た事無い虹色の魚に眸を輝かせた。
「琉貴様、この魚は何と言うのですか……?」
「んー? それはね、虹霓魚(こうげいぎょ)だよ。見たままの名前だよね」
その鱗は装飾具にされる程美しく、その身は甘く歯応えがあり見るも良し、食べるも良しな神々の国では有名な魚だ。
「……ねえ漓朱様、二週間今日まで頑張って練習してたし、完璧になったんだからそんなに緊張しなくて良いと思うよ? 主様もそう思うでしょう?」
「元々筋は悪く無かったからな」
「確かにー! それに失敗しても大丈夫、助けて上げるから」
ほら笑って笑って、と頬に手を伸ばし引っ張る琉貴に、漓朱は少し心が軽くなりゆるりと口元を弛めた。
奥座敷には既に、他国の王とその側近数名が揃っている。主役は最後に到着するという習わしで、今回主役の漓朱達はゆっくりと此処にやって来てたのだ。
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