四人の王

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「人は好かない。が、連れて帰らないとは言っていないと思うが?」 「そうだな。……だが契りを交わしたという事は、俺とは違いその人間を殺すつもりはないんだろ?」 「我は他の者達に手を出させたくなかっただけだ。これを殺すのも生かすのも我の気分次第、そなたにとやかく言われる筋合いは無い」 気に喰わない。白亜国の王は眉を顰め、忌々しそうに漓朱を睨み付ける。確かに契りを交わしたとて殺せない訳では無い。 しかし、普通に考え自分と同じく人を苦しめたり奴隷にしたり殺したりするのであれば、契りを交わす必要はない筈。 驪珀の考えている事が解らず、漓朱に八つ当たりするしか無かったのだ。目が合えば怯えの色を眸に浮かべる彼女に、吐き気しかしない。 視線だけで人を殺せそうな彼に、漓朱はぐっと手に力を込めた。そして目を瞑り、深く息を吐き出してから瞼を開ける。 恐れては駄目だ。気丈に振る舞わなければ、後で驪珀に何を言われるか解らない。 恐ろしくない訳ではないが確りと強く見返して来た漓朱に、白亜国の王、熾毀(しき)は驚いて目を瞠る。 こんなにも威嚇し人が嫌いだと主張している、神であり国を治めている己に対する態度では無い。 人であるにも拘らず生意気だ。 殺してやろうか。人差し指を立て漓朱に向けようとした瞬間、それに気が付いた黄呀国の王が口角を上げ小さく笑った。 「ふっ、これは面白い。人の、しかも女だと言うのに怯まぬとは実に興味深い。白亜国の王よ……彼女は貴様の国の者ではないぞ……? 勝手に手を出すつもりでは無かろうな」
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