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熾毀が腹立たしそうに舌打ちをする。何故人間を庇うのかと、神であるのに情け無いと目を眇めた。
一触即発の空気に漓朱は困惑の色を隠せず、どうしたものかと頭を抱える。元凶は自分であるから余計な事は言わない方が賢明であるし、だからと言って何もしないのもまた賢いとは言えない。
漓朱が意を決し驪珀を仰いだ刹那、この場には似合わぬのんびりとした和やかな声音が鼓膜を震わせた。
「まあまあ白亜国の王よ、落ち着いて下さい。黄呀国の王の言う通り、彼女は貴方の国の方では無い。……傷付けたりなどしたらどうなるかお解りですよね?」
穏やかな口調とは裏腹に、鋭い眼光を放つ眸。玉翠国の王、白葉(びゃくよう)は人を無闇に傷付けようとする行動が許せない質なのだ。
大丈夫だよと漓朱に微笑み掛け、この悪い空気を変えないと可哀想だと息を吐く。
「碧禮国の王よ、彼女を私の隣に座らせても良いですか? 野蛮な白亜国の王とは反対の位置ですし」
「我の隣に座らせるから良い。……余計な真似はするな」
「ふっ、くく……っ。随分ご執心ではないか。確かに美しいが、それならば貴様に寄って来る女達にも居るだろう?」
黄呀国の王が立ち上がり、漓朱の華奢な顎を徐に掴んだ。 まじまじと見られ、突然の事に思わず驪珀の裾を引っ張ってしまう。
自信に満ちている彼の眸に吸い込まれそうだ。真っ直ぐに伸びた鼻梁(びりょう)は、高貴な印象をより深く刻み脳裏に焼き付ける。
「……白磁の様な白い肌、か。人形の如く端麗な顔立ちではあるが、この化粧の濃さでは良く解らん。碧禮国の王よ、貴様態と化粧を濃くしたな……?」
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