捧げられたこの身

7/23

3477人が本棚に入れています
本棚に追加
/279ページ
  話し掛けて来た男の背後に横たわる死骸(しがい)に視線が行かない程美しいその姿に、彼女は固まる。 彼の極上の絹糸のような白銀の髪がさらさらと風に流れ、月光を浴びて幻想的に輝く。 身が凍えてしまいそうなくらい冷たい眸に見下ろされ、彼女はたじろいた。 「え……?」 「我の質問に答えよ、人の子」 「……っ、貴方の供物かは解らないですが、私は生贄です」 「そうか。……ならば行くぞ、人の子よ」 少女の華奢な手を掴み、怜悧(れいり)な美貌の男が歩き出す。しかし……。 「い……っ」 「……? 鎖、か。煩わしい」  鎖が邪魔をし、進めない。  少女は擦れた痛みに思わず顔を顰(しか)めた。  image=500890320.jpg
/279ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3477人が本棚に入れています
本棚に追加