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男の長い指が少女の小さな顎を乱暴に掴み、視線を逸(そ)らす事を許さない。
彼女の大きな眸が揺れ動いた。
「我の言っている意味が解らぬ程莫迦(ばか)ではないな……?」
神など信じない。
そう思っていたのに、この世のモノとは思えぬ程綺麗な容姿に先程の力を見てしまっては神を否定出来ない。
「…………っ」
「もう一度訊く。そなたの名は何と申す……?」
「……漓朱(りしゅ)」
男の目が驚愕(きょうがく)して丸くなるも、直ぐに細められた。
唇の端が愉(たの)しそうに持ち上げられ、少女は不安になる。
「ほう……漓朱よ、そなたの名は……。やはり何でもない。では行くぞ」
男が洞窟に向かい言霊を放った瞬間、漓朱の躯(からだ)に突風が当たった。
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