手紙

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24歳になったばかりの4月のある日、我が家に一通の手紙が届いた。 手紙の文字を見た瞬間私の時はしばらく止まった。見覚えのある字、見覚えのある封筒。不思議なもので、すごく前の出来事でも、心に染み付いた傷と嫌な思い出はしっかりと覚えているものだ。 予想通り、差し出し人は、父のかつて愛した人。いえ、結ばれない運命でも心は彼女を忘れる事はなかった父。だからかつて、とは言わないだろう。現在進行形の彼女からの手紙。 さすがの私も開くまでは、時間がかかった。何の為に?何故私に?そんな疑問点が脳内を駆け巡り、少し不安でもあったから。 それでも開いた手紙には、私達親子に対する謝罪文と、それでも父を想う気持ちは今でも嘘偽りないという、愛情、父への想い、私への想い、そして父の私達への愛情。全部さらけだした内容だった。 何故か、読み終わった時、涙が溢れた。父はこんなに愛されていたのだと、少し嬉しかった。世間的には許されない関係なのだろうけど、私はこうして、手紙をくれた彼女の誠意と私達親子を想う父の気持ちに心打たれた。 私は手紙の返事を、その日のうちに書いた。読み終わった瞬間の気持ちをすぐにでも伝えたかったから。 『無理矢理引き裂かれても、お互い家族が居ても、それでも愛する気持ちを全うした貴方達を、私は尊敬します。誰かをこんなに愛せるなんて一生に、そう何度もあるわけないのだから、父を愛する気持ちは、いつまでも忘れないでいて下さい。父を愛してくれてありがとう。』
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