化生転生

11/34
前へ
/34ページ
次へ
コイツそこの所、知ってんのかな。 まあ、虫と人間じゃ違い過ぎるからどうでもいいか。 金を分け終わった親父ちゃんは、媚びた目付きでこちらを見上げて来る。 あーあ、情っけないの。 「はい、立ってぇ」 指図すれば素直に立ち上がる。 「まだ、何かないのぉ?」 我ながら気色悪い猫なで声を出して、又も親父ちゃんを金庫に向かわせてやった。 ちょっーと、悪戯心。 奥行きの無い隠し金庫に入った所を見計らい、はい、ガラガラピッシャーン。 扉をスライドさせて、ついでに本棚も元通りっと。 そんな使われていない様だけど、手入れは行き届いているな。 親父ちゃんのくぐもった叫び声が微かに聞こえて来る辺り、空気は通っているのかな? 窒息死より餓死するのが早いか? ま、もうどうでもいいや。 用は済んだし。 金は思ったより手に入ったし、これ、多分に汚い出所の奴だから足は付かねえやな。 ん?
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加