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「ジョン?」
雨ざらしで少しばかり色の褪せている木戸に近寄った時、扉を内側から引っ掻く音と、その音を立てるモンに声を掛ける主の喋りが聞こえた。
ハッハと荒く聞こえる息遣いは犬か。
大型犬っぽいな。
のんびりした主の声は、そこそこ年期の入ったモノ。
隠居生活の爺さんかな?
俺は扉の横にエコバッグを置く。
相棒はそっと足元に降ろした。
不穏な空気に気付いたか、扉の向こうで犬の奴が唸り始めている。
「ジョン、どうかしたのかい?」
相変わらずののんびり声は、戸惑っているものの異変には気付いていない。
お、トーストの焼ける匂いに、珈琲の香り。
悠々自適だねえ。
年寄りなのに、朝食はご飯じゃなくてパン派か。
枯れ枝の様に細っこい爺さんのイメージが俺の頭に浮かんだ。
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