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他に人の声は無い。
ふうん、奥さんには先立たれた口か?
どっちにしろ、一人と一匹なら、二人で楽勝。
ここは、穏便に侵入させて頂きますか。
軽く、扉をノック。
「どなたか、いらっしゃるのですか?」
疑問形の声に、なるべく困った風に答える。
「すいませーん。昨夜、ダチと山に入ったら道に迷っちゃいまして、スマホの電源も切れたからお電話を借りれませんかねえ」
半分嘘、半分本当。
向こうは、しばしの窺う気配。
犬っころは、低く唸りっぱなし。
「迷われたのですか?」
あ、やべえ。
ニュースになってるかも知んねえわ。俺等の逃走。
「ええ、暗い中動くと余計に迷いそうだったんで、明るくなってから降りて来たんですが、すいません。お電話借りれませんか?」
「はあ」
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