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壁の一面が、びっしり本棚になった部屋に通された。
テーブルの上には、一人分の食事の用意。
部屋の片隅にあるケージに犬を入れると、爺さんは少し待っていて下さいねと引っ込んだ。
有り難いねえ、食事を出してくれるらしい。
だが、油断はいけねえ。
「手伝いますよ」
優しい声を取り繕って、俺は爺さんの後に付いた。
隠れて電話何てさせねえよ。
部屋を出る際に相棒に目配せしたら、陰気に小さく頷いていた。
何をするべきかは、分かっている。
あいつは馬鹿力だ。
犬の首根っこ何ぞ、簡単に腕の力だけで砕くだろう。
爺さんは本当に俺等に朝食を御馳走するだけのつもりらしい。
疑いも無く、戸棚からパンの塊を取り出し切り分けると、トースターに放り込み、今度は冷蔵庫を開けて聞いて来る。
「卵は幾つ食べますかな?」
「あ、スクランブルエッグにして良いですか? 四つ下さい」
取り出された卵のパックとバターを受け取る。
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