化生転生

23/34
前へ
/34ページ
次へ
壁の一面が、びっしり本棚になった部屋に通された。 テーブルの上には、一人分の食事の用意。 部屋の片隅にあるケージに犬を入れると、爺さんは少し待っていて下さいねと引っ込んだ。 有り難いねえ、食事を出してくれるらしい。 だが、油断はいけねえ。 「手伝いますよ」 優しい声を取り繕って、俺は爺さんの後に付いた。 隠れて電話何てさせねえよ。 部屋を出る際に相棒に目配せしたら、陰気に小さく頷いていた。 何をするべきかは、分かっている。 あいつは馬鹿力だ。 犬の首根っこ何ぞ、簡単に腕の力だけで砕くだろう。 爺さんは本当に俺等に朝食を御馳走するだけのつもりらしい。 疑いも無く、戸棚からパンの塊を取り出し切り分けると、トースターに放り込み、今度は冷蔵庫を開けて聞いて来る。 「卵は幾つ食べますかな?」 「あ、スクランブルエッグにして良いですか? 四つ下さい」 取り出された卵のパックとバターを受け取る。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加