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良い人だもん。
年寄りには優しくな。
「おや、有り難うございます」
無駄な遠慮を見せず、さり気無く好意を受け取るのも年の功かね。
相棒はむっつり黙ったまんま、もそもそ自分の分にかじり付いているが。
「しかし、何故夜間に山に入ろう何て思ったんです?」
「ああ、こいつが虫好きなんですよ。カブトムシを探しに行こうって入ったら、奥に入り過ぎちゃって」
適当な嘘。
相棒が蝶々好きで良かったよ。
山で迷ったのは、虫取りって事に出来る。
「男の方と言うのは、幾つになっても子供ですねえ」
爺さん、目を細めて笑っている。
全く嘘を疑わないし、本当に良い人。
ま、俺等は悪い人の部類だから、あんたの愛犬をもう殺ってしまっているんだがね。
一息に珈琲を飲み干しながら、俺はケージで眠る犬っころを見やった。
ピクリとその耳が動く。
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