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幽鬼に怯え、食ったモンを吐き出し続けている相棒に、紅い目の犬っころが近寄る。
足音も立てず、まるで陽炎の様に。
そして、怯えた目で犬っころを見上げた相棒にかぶり付いた。
羊羮でも噛み切るみたいに何の音も無く、相棒の首が噛み千切られ、犬の腹に収められる。
何で人の頭を丸々飲み込めるんだよ?
犬っころの顎の方が小さいだろ。
可笑しいだろと、本来なら思う筈の光景を見ながら、俺は別の可笑しさに笑っていた。
ああ、そうさ。
もう解っているよ。
ヨモツヘグイした俺はそっちの世界の者だ。
人ならざるモノに馴染めない相棒は、食ったモンを吐き出して駄目だったがよ。
俺は生きたまま黄泉の世界の住人に成り果てて、イザナミの呪いを体現する存在だ。
今の俺は、死んでも生きてもいない化け物だろう。
世界に人は溢れ過ぎたんだ。
殺し尽くすにゃ、黄泉だけじゃ手が足りない。
イザナギが一日に千五百の人を産み出すならば、イザナミは千の人を殺すとヨモツヒラサカで呪いとしか言えない誓いを立てたんだっけ。
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