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阿呆だよなあ、ケースを開けて、中身をバッグに移しゃあ良いのによ。
分かんねえのか。
靴の爪先でジェラルミンケースを蹴っ飛ばし、次にエコバッグを顎をしゃくって指し示す。
「は、はい」
やっと分かったか。
震える手先で必死にケースを開けると、中身を半べそかきながらバッグに移して行く。
おお、やっぱり結構ある。
「幾らあんの?」
問えばまたも背中がビク付きやがる。
ああ、楽しいなあぁ。
「二、二億五千万です」
震える声で丁寧に答えてくれた。
やっぱり、しこたま隠してやがったねえ。
「おし、お前一億。俺は五割増しの一億五千な」
相棒に提案すれば、無言で頷く。
可愛想に、腕の中の奥さんは肌を粟立たせて今にも倒れそう。
「はい。きちんと分けてね、親父ちゃん」
声を掛ければ三度、背中がビク付いた。
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