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この世界にはかつて争いがあった。
しかしすでに『かつて』。いまを生きる僕たちにはいにしえのこと。
そのいにしえの頃、世界にはさまざまな人がいたらしい。
翼を持たない人や水中で生きる人、地中で生きる人――そんなさまざまな人が。
けれどいにしえの争いで敗れたその人たちは絶滅し、いまこの世界にいるのは僕たち有翼の民だけ。
だからいま、世界はすべて僕たちのもの。
その僕たちのものである世界はいにしえより変わりはない。
季節と言う変化はあっても、そのどの季節においても世界は常に枯渇することなく豊かであり続け、僕たちに生きるためのものを十分に与えてくれる。
けれど、そんな変わらない世界にいる僕たちは変わり始めている。
僕はそう感じる。
だけど父さんはその感覚を否定する。
それは違うと。変わった者が時々生まれてくるだけで、僕たちすべてが変わり始めているわけじゃない、と。
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