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だけどさすがに、君の部屋には立ち入れない。
牢の中でも最も高い、塔の先端にある君の部屋は、見回りでその前を通るくらい。
なのにその夜、僕は君の部屋に入った。
いつものように見回りで通りかかったとき、僕の名前を呼ぶ声が扉越しに聞こえて。
その声のあとに、話があるから入ってとの声が続いた。
驚きで震える手で僕は扉の鍵を開けた。
部屋に入れば、部屋の奥に君がいた。
開け放った窓を背に、部屋に入って来た僕をその青い瞳でじっと見てきた。
そんな君の後ろには、皓皓とした白い光を放つ月が浮かぶ暗い空が――神さまが在(おわ)す場所であるそこが、見えていた。
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