片翼の君に

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  *  一日のうち何度か、空を見上げて天上の神さまに願う。  どうかこれ以上僕たちから失われるものがありませんように、と。  それから、新たな祝福をお与え下さい、と。  それは僕たちの習慣。だれもがやっていること。  でも前者はともかく、後者の『祝福』って何だろう?  そう思うのは僕だけじゃない。みんなもそう思っている。  そう思いつつも願っているんだ。  昔からそうだったからと、親からそう教えられたままに。  だけど、わからないものをもし与えられたとして、そのとき僕たちは与えられたことに気づけるのだろうか?  君の背後にあった暗い空を見たら、なぜかそんな疑問が頭を過ぎり、そのとき少し強い風が開け放った窓から室内へと入り込んで来た。  窓を背にしていた君の長い髪が風の進行に巻き込まれて乱れ、君のたったひとつしかない翼もまた、風によってわずかに揺れる。  ほんの数秒の間に起きたそのこと。  同じような場面をこれまでにも何度も見たことがある気がする。  だけど、そのときは心がざわつくなんてことはなかった。  なのにいまは、心がざわついた。
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