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都庁などがある新宿の超高層ビジネスビル群から京王線のあるローターリーへと続く地下遊歩道。
帰宅ラッシュでごった返す午後十八時。
そこで私は奇妙な老人から声をかけられた。
「あーぁ、お嬢さん、とても疲れた目をしているねぇ、どぅれ、一つ儂が見てあげようかい?」
――何だろう。路上占い師の類だろうか?
いつもならばこういった輩は無視をする私であったが……何故だろう。この時だけは何か見えない力によって惹き込まれる様にその老人へと耳を傾けてしまったのである。
きっと、仕事で相当疲れていたのであろう。
そう私はこの時
職場の人間関係に相当参っていたのだ。
否。……仕事だけではない。
プライベートでもそうだ。
私は煩わしい人間関係というものに
心底疲弊しきっていたのである。
その老人は一通り私の悩みを聞き終えると
指を三本立ててこう云った。
――お嬢さんに力を授けよう……と。
一つ目は『時間を巻き戻す力』
二つ目は『人の心の読める力』
三つ目は『他人を操れる力』
但し、与えるのはこの力の内の一つ。
さあ、お嬢さんはどの力をお望みかい?
その老人の問いに私は迷わずこう答えた。
――三つ目『他人を操れる力』を下さい。
と……
ああ、そうだ。
これで煩わしい人間関係に
何も悩まなくて済むのだ。
私は念の為、しっかりと老人に確認する。
この力で他人を操れれば
どんなことでもやってくれるのか?、と……
その問いに老人は笑顔で答えた。
ええ、勿論だとも。と……
――ああ、素晴らしい。
ならば、こんなに幸せな力はない。
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