prologue

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ーー2028年4月22日、横浜市 「い、いや、こないで…!たすけ…いやぁぁぁ!!」 「痛い痛い痛い…俺もあれになるのか…….嫌だ………」 「死ねオラァ!俺は殺られねーぞ!てめぇら全員ぶち殺してやる!」 とある高校の昼休みの時間。本来ならばこの時間は、持参した弁当等を広げ、賑やかになる時間帯である。 だが、今は弁当を広げる者も、売店で購入したパンやおにぎりを食べる者の姿も見当たらない。確かに賑やかではあるが、それは全く別の意味合いであった。 学校であるが故に殆どが10代半ばの青年達で、皆悲鳴を上げ、絶望し、精神が崩壊した者もいるのか叫び狂っている生徒までいる。 辺りには人の血や、何なのかは分からないが黒い液体や肉片と思われるものが散らかり、今にも吐いてしまいそうな、否、既に吐いている者もいるのだが、鼻が捻じ曲がりそうな程の異臭が漂っている。 そして何より目を疑ってしまう光景は、倒れ、死んだはずの人間が歩き回っているのだ。 その歩く死体の姿は様々だ。腹が破れ腸らしき内臓が飛び出ている者、腕が片方無い者、下半身が無く腕だけで動こうとする者。 その全ての死体が、傷口から黒い液体を撒き散らしている。 そして歩く死体達は、生者を捕まえ、貪り食べていた。 「な、なんだよこれ…どうなってるんだ…。」 そんな中、掃除用具用ロッカーの中に隠れている男子生徒ーー倉間 幸太(くらま こうた)は、頭を抱えながら息を潜めていた。 耳にややかかる程度まで伸び、あまり手入れしていないのだろう、ボサボサで硬そうな黒い髪。日本の男子高校生の平均的な身長で、あまり女性受けしなさそうな顔。 校舎を逃げ回る生徒達の制服は血や泥で汚れているが、幸太の制服は全く汚れていない事から、この騒動が始まってすぐにロッカーへ隠れたのだろうということがわかる。 「くっそ、何の映画だよ、これ。夢なら覚めろよ…」 ロッカーの隙間から、教室の様子を伺う。幸い、歩く死体は生者を求めてどこかへ行ったようで、この教室には一体もいない。 「いや!やめてぇ!」 安堵の息を吐いた時、1人の女子生徒が悲鳴をあげつつ幸太の隠れる教室へと駆け込んできた。
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