はね、ひとかけら

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タランチュラの豹変に困惑していた天使は、視線の意味に気づいたのだろう、迷ったかのように視線をふらつかせる。 「ドミニクにでも聞けばー??俺っち次の自習中に読む漫画用意しなきゃだし、お空(天界)で“ソレ”がどんな扱いか知らないしー」 俺っち残虐で悪逆非道だけど、他人のプライバシーをぺらぺら喋るような馬鹿じゃないもーんとけらけら笑うと、青い毛並みの耳を揺らしていたルイに 「で、三年の授業どの教室でやんの?」 と聞き始めた。 双子は、少々困ったようなそぶりのドミニクに歩み寄り、疑問について聞こうとしたが、丁度口を開いた瞬間に鳴り響くチャイムに妨害され押し黙る。 チャイムが鳴りやむと、五分前行動が常の律儀な天使は、双子と時計を図りにかけるように交互に見てから 「…お話しできることはお話しましょう。いつがよろしいですか?」 と性別不明瞭な声で問うた。 「放課後」 ぞんざいに言い放つ希の言葉に 「では放課後」 と返した巨体は、機械的なきしみを放ちながら次の授業に向けて歩き出す。 ふたりぼっちになってしまった教室 迷い込んできたのだろう、立ち尽くす双子の背を通り過ぎた泥蜂が一匹、窓にはりついて空へ還ろうともがいていた。
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