15人が本棚に入れています
本棚に追加
タランチュラの豹変に困惑していた天使は、視線の意味に気づいたのだろう、迷ったかのように視線をふらつかせる。
「ドミニクにでも聞けばー??俺っち次の自習中に読む漫画用意しなきゃだし、お空(天界)で“ソレ”がどんな扱いか知らないしー」
俺っち残虐で悪逆非道だけど、他人のプライバシーをぺらぺら喋るような馬鹿じゃないもーんとけらけら笑うと、青い毛並みの耳を揺らしていたルイに
「で、三年の授業どの教室でやんの?」
と聞き始めた。
双子は、少々困ったようなそぶりのドミニクに歩み寄り、疑問について聞こうとしたが、丁度口を開いた瞬間に鳴り響くチャイムに妨害され押し黙る。
チャイムが鳴りやむと、五分前行動が常の律儀な天使は、双子と時計を図りにかけるように交互に見てから
「…お話しできることはお話しましょう。いつがよろしいですか?」
と性別不明瞭な声で問うた。
「放課後」
ぞんざいに言い放つ希の言葉に
「では放課後」
と返した巨体は、機械的なきしみを放ちながら次の授業に向けて歩き出す。
ふたりぼっちになってしまった教室
迷い込んできたのだろう、立ち尽くす双子の背を通り過ぎた泥蜂が一匹、窓にはりついて空へ還ろうともがいていた。
最初のコメントを投稿しよう!