ーカミサマー

2/2
前へ
/310ページ
次へ
…私にとって、サフィオ様は神様のようなものだから… だってサフィオ様が居なかったら、今頃私は… “カミサマ?” ごめんさいドミニク、貴方達天使が愛する神様のことではないわ。 こちらの世界ではね、命を救って貰ったり、心を救って貰ったりした人のことを 『私にとっての神様』 って言ったりするの 命を救って貰ったり…心を救って貰ったり… ドミニク? ありがとうございます 貴方…今、笑った? ええ、少し可笑しくて アメリア様 “カミサマ”とは 神に加え、様という敬称までつくのですから 呼ぶ人にとって 主よりも尊い方なのでしょうね… 「何故堕ちない?」 と、その堕天使は言いました。 私は 「さあ?」 と返しました。 気を失うことも許されない痛みの中 砕けて落ちた体を見ても何も嫌ではありませんでした 「お前は神に失望したはずだ」 「ええ、主への愛は途絶えて久しい」 「ならば何故」 「カミサマ」 私は、私とよく似た苦しみを抱えて 俯く紫の少女を思いました。 貴女はきっと大丈夫 だって貴女にもカミサマがいる 目の前の堕天使は、訳が分からぬという顔をして 私を見つめておりました。 「貴方には“カミサマ”がいなかったから、そうなってしまったのですね」 というと 「気が触れたか」 と吐き捨てました。 以前もこんなことがあったなと ひどく晴れ晴れとした気持ちで私は居りました。たった一人で死に向かう中 私は出会ったのだ、と あの時と違って、翼はまだ動くし手首も折れてはいませんから もう少しだけ戦ってみるとします ああ、自分でこのように 何かをしようと決めたのは何時ぶりでしょうか これも貴方の奇跡でしょうか “カミサマ” 一つだけ心残りがあるとするならば 私の砕けた体を抱いて きっと泣いてくださる慈悲深き 水晶の涙 シトリンの眼差し 唯一独占できる最期の機会を 逃してしまうことだけです。 主よ、貴方への愛は途絶えて久しい ですが最期に、感謝します 私に“カミサマ”を下さったこと 深く、深く感謝します。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加