悪夢症候群(ナイトメアシンドローム)

17/18
前へ
/310ページ
次へ
楽しげに笑みを浮かべ、満足そうに笑う 『いつも自白させられている人』 それを不機嫌さを露に腕を組み見つめていたツミは、彼の額に手を伸ばした 「黄色い眼の鳥、は気に入らないわね」 「いたい!」 バチコーン!と高らかな破裂音とともに、ツミの指先がデコピンを放つ 「いたいよツミー」 メーディックの胸元に相変わらず拘束されたままの自白くんは、ぷんすか!ぷんすか!と擬音表記されそうな様子で訴えた 「まぁまぁ、貴方の瞳は確かに黄色系ではありますが…どちらかといえば橙色でしょう」 「変わらないわよ、大して」 宥めるメーディックの声を、鼻息とともに蹴散らして 繊月は数歩進んだ 「まぁいいわ」 厚い唇が開かれて、ぎらぎらと白い歯が覗く 「交渉だってなんだってやったげる」 睨み付けるような眼差しには、また狂喜を宿した月が浮かんだ 「ウチの組織が大きくなればなるほど、『母さん』にかけられる技術も材料も増えるのよ」 繊月の頭部から映えた一枚きりの羽が、心を写すように羽毛を膨らませた 「上司に大きなクチ叩くようでわるいけど、シャックスとメーディックには協力を頼むわよ」 口許をつり上げ振り向けば、2体の異形はそれぞれの単眼を僅かに細めた 「それはつまり“私に好きなだけ劇薬の実験をしていい”という意味なのでしょう?」 ならば大喜びですよ、とメーディックは注射器の片腕を構えて見せる 「ボクもおっけーなんだねー。ツミの分の仕事やらなきゃいけないのは面倒だけど、エルピスの材料を集めるってことは、“ホムンクルス兵の材料もたーくさんくれる”ってことなんだねー」 相変わらずの間延びした声でシャックスは答え 「ギブアンドテイク、承諾なんだよー」 と笑った。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加