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少年はこうも言った。
羽を三枚くれたら、ガーネットを直してあげる、とな。
護衛は、無論渋い顔をしていたが、玩具を前に駄々を捏ねる幼子を言いくるめる手段は無かったらしい。
私はガーネットを補充する手間を想定して嫌になって…己の風切り羽から大きいものを二枚
少年が、羽ペンにしたいなどと言うものだから、それにあった大きさの物で縞模様が綺麗に入った一枚を選び渡した。
…無論、羽に宿った天使の力は抜いて。
少年は玩具を手にいれて上機嫌な様子で、私のブローチを小さな手で掴むと
不思議なものだな、そっくり同じに見えるガーネットがそこに収まっていた…ー
「まぁ、それだけの話だ」
「それが…父だったのですか?」
信じられないという顔をしたアメリアに、クロリオンは頷いてから
「誰しも皆、生まれてすぐに敵を定め罵りなどしない」
と呟く
「タランチュラと会って何も言わなかったということはもう忘れているのだろう。
或いは、穢らわしき梟羽の異端に触れたという、忌々しい記憶として、無かったことにしたのかもしれぬ」
己に向けた辛辣な言葉を、表情一つ変えることなく呟いた横顔をアメリアが見上げた時だった。
クロリオンの厚い唇が僅かに震え、何かをこらえる様にカチカチと歯が噛み合い、鳴る。
その様子に首をかしげると、クロリオンは男性らしい節のある長い指でその口元を抑えた。
「…どうなさいました」
「少々…言葉が“枷”に触れた」
「枷?」
鸚鵡返しに返された問いに、クロリオンは天使の多くは心に枷や制限がかかっていると説明した。
そして己は、神への忠誠においての精神や言動に強く枷がかかっていて
「神を批判する者を、その心根を、理解できたとしても…許すことを許されていないのだ」
と補足を加えた。
「先ほど、生まれながらに敵を定め憎む物などいないと言ったが…」
食堂の壁に貼られた様々な学科の写真を眺め、操縦学科で彼は目を留める。
「我々天使とロボットは…その例外だ」
そういった意味では、捻じ曲がり罪を犯しなお歴史を繰り返す人間と…まで呟いて、その先がまた枷に係ったのだろう。
薄い表情に表しきれない感情を滲ませ、口の形だけで
『わたしは ひとよりも おろかだ』
といってみせた
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