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無情にも、再度押さえつけるかのように背を踏みしめられ、マスカレィドの隻腕がからめ取るように右の大きな翼を抱える
その手を振りほどこうと暴れる四枚の翼のうち左の二枚めがけ、鉄塊のような大剣が投げるように落とされた
重量級の武器をどっかりと乗せられ、二枚の翼は不恰好にひしゃげて震えることしかできず、右の小さな羽根は空いた方のつま先に造作もなく捉えられ、砂にまみれて動くこともかなわない
羽全て押さえ込むと、マスカレィドは巨躯そのままの怪力で、緩慢に翼を引いた
筋肉の繊維が千切れる音が響き、次いでその大きな翼を支える骨が鈍く重い音を発する。
「…あ、くぅ…!」
肉の合間から血が吹き出し、褐色の羽を染めていく。
筋と骨が無理やり剥される音と、うめき声ばかりが静寂に響き、わずかに地面に落ちた血がしゅうしゅうと煙をあげる。
そうして、ひときわ大きく鈍い音がゴキンと響くと、あとはあっという間であった
羽根をつなぐ最後の綱であった骨が外れ、力不足に肉が無様に引き裂ける
「…がっ、あ“あ“あ”あ“あ“あ“あ”あ“あ“あ“あ”あ“あ“あ“あ”あ“ッツ!!!」
慟哭、または絶叫
もしくは両方。
喉を焼くような叫びが響き渡り金の眼が激痛に見開かれた
ねじれた繊維質の肉の中、関節をむき出しにした骨が赤い血にまみれ鈍く光る
人ならざる血液は空気に触れて赤い煙を立ち上らせて燃えた。
「ああ、そういえば…」
ぐったりと倒れ付しながらも、依然土を握り締め無様にもがく天使を眺めながら、男はわずかに笑う
「高位の竜の体液は、その一滴で土や木に紛い物の命を与えるというが…※
本来なら地上に降りることを許されぬ座天使の骨肉は、どんな力があるのだろうな…ぁ?」
(※出典:西遊記)
ぼたぼたと、マスカレィドの手に握られた翼から血が滴っては、煙をあげて炎を纏う
男はそれを眺め、思案するような動作をすると
「持ち帰り易いように…厄介な羽をすべてむしれ。そうして歯向かうようなら手足も落とせ。噛みつくようなら歯を折って、睨むようなら目を…いや、座天使の眼は特別製だ、使い道もありそうだから…それは我慢しよう」
と、長々と呟いてから、もう一度、今度はひどく楽しげに
「やれ」
と一言言い放った
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