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ーー人間は罪を犯す生き物である。
「ーーというのが、私の持論なのですが…いかがでしょうか?」
神父風の若い男が問いを投げかけた相手はすでに首を絞められ息絶えており、古びた教会の柱にまるで神聖なもののように磔にされている。
「貴方は罪を犯し、その罪を償った。しかし、貴方は生活に困り…再び強盗という罪を犯した」
神父は男が持っていたバッグから一万円札を一枚だけ抜き取り、それをおもむろに天に掲げた。
「……ですが、私は貴方の罪を許します。『もし、汝の兄弟、罪を犯せばそれを戒めよ。もし、悔い改めなければ、之を許せ』……私はそう教わりました。しかしながら、私が貴方を許しても世間や被害者は許しはしないでしょう。ですから…このような結末で非常に残念です」
神父は男の首にロザリオをかけ、自身の胸の辺りで十字を切り、そのホームレスへ祈りを捧げた。
「せめて、貴方の長い長い旅路の果てに永久の安らぎがあらんことを……このお金は私が責任を持ってしかるべき場所へ届けさせて頂きます」
その瞳から流れ落ちた一粒の涙は男の死を心から悼んでいる証であった。
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