プロローグ

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一億円で買収してほしい。 【福部商店社長・福部和久】に突拍子もない相談が持ちかけられたのは、師走の半ば頃だった。 福部商店は従業員30人ほどの中小企業であり、金額云々を含め同業の会社を買収するなど、あり得ない話である。 しかし、買収話の仲介役である投資会社【QWAカンパニー融資部統轄部長・泥谷砂男】は、同業他社買収こそが低リスク高リターンの企業成長に繋がると和久を説得し続けるのだった。 地元企業のシェア争いに加え、近隣県企業の新規参入に伴う競争激化。 争いに破れた企業の末路… 泥谷は融資をしていた蒲池商店を条件付きで買収してもらおうと考えていた。 以前、泥谷は倒産した白井製茶を和久に無償で譲ったことがあった。正確には白井製茶に融資をしていた資金が焦げ付くのを避けるため、福部商店に譲り経営の立て直しをはかったのだ。 福部商店も機械の老朽化と注文増のため、生産能力が限界であり、白井製茶の機械が福部商店と同じということで引き受けた。 しかし今回は一億円での買収話。 それには理由があった。
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