第一章:帰還

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優姫が座り込み晃の髪を撫でる。 「老けたね」 三年振りに見た母親の顔を見て思わず出てしまった言葉に優姫の表情が固まった。 その瞬間、髪を撫でていた手が晃の頬に触れると物凄い力と共に晃の頬に鋭い痛みが走った。 「イデデデデデデデデデデデデデデデ」 「ふふふふ、再会早々、そんな事を言う口はどの口かしらぁ~リスティアに行って性格が悪くなったのかしらぁ~?」 「か、母さん、変わってないね、痛い痛い、俺、怪我人」 全身の痛みと頬の痛みによる同時攻撃に耐え切れず。弁解を行いようやく解放された晃は抓られた頬を押さえる。 「・・・痛ってぇ~」 「全く、親子の再会を台無しにして」 頬を押えて残念そうな表情を浮かべる優姫の姿に晃は頬から手を離して真剣な表情になった。 「母さん、俺がリスティアに行っていた事、知っていたんだな?」 そう言った瞬間、優姫も真剣な表情になり晃を見つめるとコクリと頷いた。 「巫女の力で未来を見て事前に知っていた?」 「えぇ、そうよ」 「そっか・・・」 優姫の答えに晃は納得した。晃も巫女の力を受け継いでいるので、話せなかった理由を分かっているからだ。 「東の国で・・・アキハさんとキリハさんに会ったよ。二人共元気だった。」 晃は静かにリスティアで出会った人の名を告げると優姫は目を見開いた。 「そう・・・」 「後、二人共俺と同い年の娘が居たよ、名前はハルナとミズハ、ミズハと俺達は従兄妹同士だ」 そう言って、晃は手を上から下に動かすと魔力によって異空間を作り出して物等を入れて置くボックスを開き中から、大巫女、アキハ、キリハ、そして何人かの巫女族から預かった手紙を優姫に差し出した。 「母さんに渡してくれって頼まれた。」 「・・・・」 優姫は手紙を受け取り、ジパング語で書かれている字を見て涙が手紙の上に落ち始めた。 「・・・後、母さん、ただいま」 そう言うと優姫も涙を拭って笑みを浮かべ。 「おかえりなさい、晃」
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