第五章:剣舞

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裏の社に入ると優姫が奥にある戸を開けて中から一振りの刀を取り出す。それを見て晃はその場に跪いた。 「これが晃の刀よ清白雪(せいしらゆき)よ。」 天道家には白夜真抜流の継承者に代々受け継がれてきた『銀水蓮』という刀がある。現在、その刀は泉が継承している。そして、晃が白夜真抜流の奥義を継承した時に泉から晃に継承される刀でもある。 この刀はベリューアが現れなければ、作られる事の無かった刀だろう。そして、晃がリスティア界に行っていなければ使っていた一振りだ。 晃は優姫から刀を受け取ると流れるような動作で鞘から引き抜き刀身を見つめる。 「この刀・・・俺の刀と同じ拵えだ。」 「それはそうよ。晃に合うように泉さんが作らせたんだから。」 晃は刀を鞘に納めると立ち上がり振り返りミリアムに刀を差し出した。 「これは、今日からミリアムの刀だ。」 「えっ!?」 「母さん、親父には俺から説明する。」 「わかったわ、本来は晃の刀だから晃がしたいようにしなさい。」 優姫から許可された為、晃はコクリと頷いた。 「ど、どういう事ですか?」 「ミリアム、この世界にはベリューアが居る。もし、トライフィアを使えばミリアムがリスティア界の光帝である事が知られてしまう。」 ミリアムは魔法戦闘に特化しているがこの世界では晃が開発した結界内でしか行使出来ない。そうなった時にミリアムはトライフィアによる近接戦闘しか出来なくなってしまうのだ。 そして、晃の一言でミリアムは全てを察したようだ。 「・・・ですが刀は」 「あぁ、だから魔石を使ってこの清白雪をミリアムの魔武器にする。」 「晃が以前任務で手に入れた熾魔石ですか?」 晃が熾魔石を手に入れた事をリスティア界に居た時に話していた為、覚えていたようだ。 「そうだ。この刀なら熾魔石に適合出来るし、ミリアムの魔力にも耐えられるだろう。」 「分かりました・・・私が晃の代わりにこの刀を使わせて頂きます。」 するとミリアムは先程、晃がやったように跪いて晃から清白雪を受け取った。
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