第五章:剣舞

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フリーシアに手伝ってもらって朝食を作り終えた頃に夜華とシン、そして、香凛が起きてきた。全員で朝食を取った。 「晃様、流石ですね。」 「こんなに美味いのは久しぶりだ。」 「気に入ってもらえてよかったよ。」 全員、白凛高校の制服に身を包みコーヒーを飲みながら雑談をしていた。 「て、天道さんは何処で料理を?」 「料理は母さんからだよ。」 そう言って晃は一息ついてから真剣な表情に変えると香凛の前に先程術式を組み込んだ紙を入れた小さな袋を取り出した。そして、彼女の前で袋に魔力を込めると一つの蝶を模ったペンダントに変化した。 「香凛さん、貴女が置かれている状況について俺達は何も聞いていない。けれど、察しは付いている。」 香凛は驚きの表情を浮かべる。それが晃が今見せた袋をペンダントに変えた魔法についてなのか、晃が香凛の置かれている状況について察しが付いているという発言に対して驚いたのかは分からないが晃は説明を続ける。 「何故、わかったのかって顔ですね」 そう言って、晃は話に上がっていた盗聴器を香凛に見せた。 「盗聴器です。これはどこでも手に入るありふれた物です。これが先程、香凛さんが来ていた服の襟に着けられていました。」 その瞬間、香凛の表情が驚愕に変わり青い顔をしながらカタカタと震え始めた。無論、その表情を見た晃は彼女が置かれている状況について明確に知る為に夜華にアイコンタクトを送ってから香凛を見つめる。 「香凛さん、貴女の事を少し調べました。かなりのファンが居るみたいですね。昨日も多くのファンに囲まれるような仕事をしていたようで」 晃は彼女のスケジュールを全て知っているわけでは無いが、彼女が昨日何をしていたのかはネットでも十分に得る事が出来た。 「貴女はストーカー被害に遭っていますね?」 「っ!?」 その言葉に彼女は身を固くした。その反応で晃の推測が間違いない事が証明された。だが、これは晃やこの場に居るメンバー知りたい事ではない。何より、ストーカーへの対応は警察か専属で居るであろう専門の弁護士が行う事だ。 この件については早々に手を引きたい所だが、もしこれに邪魂晶が関係しているのならば、警察や弁護士では手に負えない話となる。
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