第五章:剣舞

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一つのアカウントに注目して読み進めていくと書き込みにもある特徴が見えていた。それは、文面が過激になったのが香凛へのストーカー行為がエスカレートし始めた時期と一致していたのだ。一通り書き込まれている内容を確認し大体の人間性が見えて来た頃、香凛が戻ってきた。 「天道さん、社長が此方としても早く捕まえて欲しいから協力して欲しいと伝えてくれと言われました。」 「了解した。」 どうやら、かなり話の分かる社長のようだ。事前に玲が京伽経由で香凛の所属する事務所に晃の作戦を伝えていたのも大きかったのだろう。 これで第一段階はクリアした。後はーーー。 晃は立ち上がり、晃が事前に作っていた弁当と引き換えに晃が注目したアカウントの持ち主に付いて玲に調査を依頼する。玲に調査等の依頼をする時にはいつも料理やコーヒーを提供する事で調べて貰っている。 そして、玲が調べた結果が求めた以上の情報まで調べてくれる為、かなり助かっている部分が大きい。勿論、晃もその分、玲に対価を払っている。 玲との取引を完了させると皆に一言告げて部屋を出てスマホを取り出した。部屋を出る瞬間にフリーシアにクスクスと笑われていたが敢えて見なかった事にする。何より、この作戦には晃個人としてもある人の許可が必要だと思っている。 「あぁ、ミリアム、おはよ。」 電話の相手はミリアムだ。本題を出す前にミリアムから睡眠時間を聞かれてしまい素直に二時間の睡眠を取った事を告げる。睡眠の話は過去に寝ずに行動し続けていた時期の事が尾を引いており厳しく聞かれてしまう。 その後、ミリアムに香凛が抱えている事情を説明してから晃が考えた作戦を説明する。 『そうですか、晃は邪魂晶が関わっている可能性も考えているんですね?』 「あぁ、現状調べられる事を調べたらどうも条件が揃っているように思える。」 『分かりました。ちょっと嫌ですけど仕方ないです。』 「・・・・」 何故か電話口でもミリアムがどんな表情をしているのか分かってしまい晃は思わず空いている手で口元を当てる。これは晃の癖だ。晃が口元に手を当てるのは考えている時と緩む口元を隠す為のどちらかであり。今回の場合は後者に該当する。
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