幕間:零氷と九尾の妖狐

4/11
前へ
/834ページ
次へ
晃は刀を振って湖の水を確認する。今の晃と水月綺は湖の上で戦っており二人共水面に立っている状態なのだ。普通は水属性の魔法を足に纏えば浮く事は可能なのだが今の晃はそんな魔法を使ってはいない。つまり、こうして立っているのは別の要因なのだ。 「普通の水か・・・」 刀で救った水はこの濃い魔素の影響を受けてはいるが、ただの水と呼べるレベルのものだった。 「なぁ、九尾の仙狐、お前に名前は無いのか?」 「何?」 「俺はお前を使い魔にしたい。それに戦っている相手の名前を知らないのは失礼だ。」 晃の言っている事は最もだ。幾ら下に見ている相手でもこうして戦っている以上、敬意を持つのは必要だと思った水月綺は晃を真っ直ぐ見て。 「我は悠久の時を生きる九尾の仙狐、名は水月綺だ。」 「水月綺・・・この景色と同じで良い名前だ。俺はユウ・・・いや、この場では本名を名乗るべきか、俺は天道晃、異世界から来た人間だ。」 当時、リスティアではユウ・ミナカと名乗っていたが晃だったが此処には晃と水月綺しかいなかった為、自分の名前を名乗っても問題ないと判断して晃と名乗った。 「異世界から来たとな。なるほど、道理で魔力の扱いが未熟な訳だ。」 「それを言われると耳が痛いな。けれど、水月綺を見て勉強させて貰っている。」 その瞬間、晃の纏う雰囲気が変化した目付きは鋭くなり、言葉に抑揚が無くなり淡々としたものに変化した。 白夜真抜流 境地 真鏡 当時の晃は瞬時に真鏡に入る事は出来なかったが、話ながら集中力を高めて行き真鏡に入ったのだ。 「行くぞ!!」 晃は刀を湖に突き刺すと湖を切り裂くように加速し、水しぶきを上げながら水月綺に突っ込んできた。 「そんな事をして自らの居場所を晒しているようなものだぞ!!」 水月綺は術符を再び取り出し投げると今度は鏡でその魔法の威力を向上させて水しぶきの場所に放ってきた。 「そうだ。俺の居場所を晒しているのさ!!」 晃はそう言って刀で大量の水を掬い上げて魔力を纏った膜を形成した。その膜は水月綺の放った魔法の進行を遅くすると共に包み込み威力を殺しやがて消し去った。
/834ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4990人が本棚に入れています
本棚に追加