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晃は右手に氷零硝・蒼牙を纏った凍華を握ったまま月夜翠桜を使って苦無を投影すると苦無に魔力を纏わせて貫通力を高める。
「ゆけ!!」
しかし、先に魔法を発動した水月綺が炎、水、風、雷、地を纏った弾丸が一斉に襲い掛かって来た。
晃も苦無を投擲するが魔法を突き抜けるだけで魔法は残ったまま晃に飛来する。しかし、晃に取ってはそれだけでよかった。
「避雷針!!」
晃は雷属性の魔法で投擲した苦無の場所へと瞬間移動したのだ。それによって水月綺の放った魔法から逃れ更に水月綺を間合いに捉えた。
「はぁぁぁ!!」
水月綺に刀で薙ぎの斬撃で一文字に切り裂くが手に伝わる感覚が目の前に居る存在が違うと告げた時だった。水月綺の身体が水となったのだ。更にその水は泡を立て始め無数の触手となって晃を縛らんと蠢く。
「凍れ!!」
晃に巻き付いた触手はあっという間に晃の動きを封じるが直ぐに凍らせて拘束から自力で抜け出すと湖を一気に凍らせながら詠唱を始める。
「《天恵をも凍てつかる氷の化身よ、我が名のもとに顕現し氷河の世界に変えよ-----ニブルヘイム》」
凍華を突き立て魔法名を唱えると辺り一面が冷気に包まれ氷河の世界へと姿を変えた。
「我の空間を支配しただと!?」
「水月綺が自分の戦い易い空間にするなら俺も俺が戦い易い空間にするだけだ。」
その瞬間、晃の身体から強烈な冷気が噴き出しこの空間に漂う空気を冷たくなり、水月綺の口から白い息は吐きだした。
「何という魔法力だ。我の空間を支配するだけでは無く、ここまでの事象干渉を及ぼすか。だが、まだ魔法の制御が甘い。所々に綻びが見える。」
「どうやら俺は精密な魔力コントロールが苦手みたいでな。ムラが出来易いらしいんだ。けれど、今は目の前に居る水月綺に認めてもらう事が先だ。」
「何故そこまで?」
「俺は水帝として力を付けなければならない。今は生きる為に生きて元の世界に帰る為にな。けれど一人では力が足りない。だから俺が生きる為の力を手に入れられるように手伝ってくれる存在が必要なんだ。水月綺は魔法が得意なんだろ。なら俺に魔法の教えて貰いたい。」
そう言う幼さが残る少年の目は真剣そのものだった。そして、その瞳には、未だ目覚めていない何かが宿っていた。
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