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「そ…っんなこと、言わないでよ。泣けてくるじゃん。」
水滴で地面が歪んだ水玉に染まる。
「奏人…っ、好きなの。離れたくないの!」
もう関係が崩れるとか、どうでもいい。
言うはずのなかった気持ちが漏れたのも、奏人の優しい言葉のせいなんだから。
気まずくて、しばらく顔を上げられなかった。
「俺も。」
「…んえっ?」
奏人の言葉の意味が飲み込めなくて、変な声を出してしまった。けど、恥ずかしいとか思う余裕すらない。
奏人は何もない左下に視線を向けながら頭を掻いている。
「だから、俺も好き。」
再び涙が溢れて奏人がよく見えない。これは、本当に現実?
「瑠璃さん、俺と付き合って。」
そう言って奏人は私の右手をとった。奏人の両手に包まれた私の手に、熱が伝わる。
温かい。これは夢じゃないんだ。
「はい…っ。」
涙で濡れた顔に赤く染まった鼻の頭。この時の私はさぞかし不細工だっただろう。
それでも、奏人は確かに優しく微笑んでいた。
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