春の朝、

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春の朝、

朝、外へ出てみると霜が降りている。 季節はもうじき春を迎えるというのに、一歩外へ出ると、冬の外気が肌を刺しておれを懲らしめる。 別に寒いのも暑いのもそんなに嫌いじゃないし、苦手ってわけじゃない。だけど流石のおれだって人並み程度には寒くもなるし暑いとも感じる。そして三月下旬、おれは寒さに四肢をぶるりと震わせている。   だがしかし、目の前ではおれの中の常識を覆す光景が広がっている。 「わーい!ねえねえ見てみて!窓が、ふあーって白くなってるよぉ!」 なんでかなあ、なんでかなあ、と繰り返しながら街中の駐車場に停められている車の窓をひとつひとつ覗き込むその姿に、おれは白いため息を吐いた。 「寒いからに決まってんだろ!バカネコ!いいからクルクル回んな!見てて鬱陶しいんだよ!」 少しだけ声を潜めながら怒鳴って注意すると、そいつは長い髪をふわりと揺らし、その場でくるりと一回転してみせた。 「なぁーんでー?べっつにワガハイ誰にもメイワクかけてないよー」 悪戯な笑みに、おどけたような口ぶり。こいつ、あの白銀の王に似てきたな……。ふとそう感じてイラッとする。  白銀の最初のクランズマン、雨乃雅日ことネコは、本当にその名の通り猫のようだ。 自由気ままで周りのことなんてほとんど気にしていない。ただ自分の気の向くまま赴くままに行動し、好き嫌いも激しく何より自分に正直だ。
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