プロローグ:夢の終わり、夢の続き

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「いいねフクっ! そうだっ!」  山田のパスは石元の背中に直撃するようなやさしくないパスだったが、福石の開けてくれたコースには石元しか居なかった。  石元は振り向きざまに余裕を持ってトラップする。  相手DFを背中に背負い、手でコントロールしながら、ちらっと時計を確認した石元は、これがラストプレーだと確信した。 ――AT《アディショナルタイム》は3分、後半47分  A代表で10番を背負ったこともある「永遠のサッカー小僧」石元は、急な加速で相手DFを一人抜き去ると、サイドの深い位置からドライブをかけて、ダイアゴナルに全力疾走でエリア内に入り込む財満の足先ギリギリに落ちるボールを蹴る。 「ぶち込め! ザイッ!」  左右から財満を挟むように詰める大柄な相手DF。身長168cmしか無い小柄な彼は地面から足を引き上げられるような浮遊感を感じた。  しかし、目の前に落ちてきたボールには虹がかかっている、それどころか自分の蹴ったボールがこの先どこに飛んで征くのかも彼にはハッキリと見えた。  DFに挟み込まれたままリハビリが終わったばかりの右足を長く伸ばす。 「とどくっ!」  相手GKの伸ばした手と財満の長く伸ばした足先が交錯しそうになる。しかし一瞬早く財満の脚に触れたボールは、彼の見た虹色の軌跡通りに相手GKの頭上を超え、美しい放物線を描き、ゴールに吸い込まれていった。
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