プロローグ:夢の終わり、夢の続き

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 呆然とするGK。  悦びを爆発させる味方イレブン。  電光掲示板に得点が光る。 【多FC 鬼FC】 【 0 ― 0 】 【 1 ― 0 】  勝利は目前だった。 「まだ諦めるなっ!」  相手だって引き分ければ昇格なのだ、それにサッカーは1分あれば1点取れるゲームでもある。  相手キャプテンがゴールの中からボールを拾い出しで走る。センターサークルにセットしたボールを長く蹴り出し、味方のDFが大きく跳ね返した瞬間、試合終了の笛がピッチにこだました。 ピッ! ピッ! ピッーー!  ピッチに倒れこむ相手選手。  泣き顔を両手で覆い、空を見上げる味方選手。  ベンチから飛び出す仲間たち。  そして、爆発するような声援をピッチ外から選手たちに降り注がせる1万2千人のサポーター。  20××年11月27日。  多喜城FCの歴史に、幸せの記憶とともに刻まれるであろうこの日。  彼らは、念願のJ2リーグ昇格を自らの力で勝ち取ったのだった。 ――そして、この偉業が達成される1年前、11月に物語は遡る。
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