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「ぐぇ。」
学校の校門の近く。
不意に後ろからマフラーをひっぱられて、俺はそんな声を出した。
「あ、ごめん、三好君。」
なんと憧れの彼女ではないか!
「ど、どした?」
俺はちょっと緊張する。
「いや、あの・・・。」
うつむき加減な彼女は、意を決して顔を上げた。
「猫を助けたのって、本当だったんだね!うちも猫を飼ってて、
昨日夕方具合悪くてお医者様連れてったら、今朝同じ高校の男の子が
怪我をした猫を連れてきたって言ってたから・・・!」
おおお。あのお医者さん、グッジョブ!
「それなのに、サイテーなんて言っちゃってごめんなさい。」
大きな瞳なのだけど、ややたれ目で。
その彼女が上目づかいで、俺をうかがう。
しゅんとした彼女は、まるで叱られた時の猫みたいだ。
無意識に、俺は彼女の頭を撫でていた。
「そんなの、気にするなよ。」
いや、ウソだ。気にしてほしい。
「ちょ、ちょっと、猫じゃないんだから!」
照れた彼女は俺の手を軽く振り払う。
でも、決して嫌がっているわけではなさそうな気がする。
ふと俺は今朝の奇妙な夢を思い出す。
まさか、な。
立ち止まって空を睨んでいると、
可愛らしく小首をかしげた彼女から声がかかった。
「ほら、また遅刻しちゃうから、行こ!」
「おぅ!」
俺はにっこり笑って彼女を追いかけた。
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